「遠方で利用しない不動産を相続しそうなんだけど…」
売るのも貸すのも難しい不動産を相続しそうで困り果てているという人は「相続土地国庫帰属制度」をご存じでしょうか?
国が引き取ってくれるのだから安心と思いきや、じつはこの制度を利用するには結構なお金が必要になります。
では、相続土地国庫帰属制度を利用するにあたり掛かる費用には何があるのでしょうか?
目次
相続土地国庫帰属制度に「申請できる土地にする」ためにも費用がいる!?
相続土地国庫帰属制度では「申請のできない土地」があります。
申請でお金が掛かる以前に「引き取って貰える状態にする」のにお金が掛かることがあるので、まずはそちらからお伝えします。
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建物がある土地
建物がある土地の場合は、解体して更地にしないと申請出来ません。
解体費用は構造によって価格が異なりますが、以下が目安となります。
- 木造…3~5万円/坪
- 鉄骨造…4~6万円/坪
- RC造…6~8万円/坪
例えば、木造50坪の建物であれば、おおよそ150~250万円が必要となります。
その他、アスベストのある建物だと調査費や除去費用が別途かかります。
抵当権等が設定されている土地
国庫に帰属させたい土地に抵当権や地上権、地役権などが設定されている土地は引き取って貰えません。
仮に抵当権を抹消させるためには、不動産一個につき1,000円の登録免許税と司法書士手数料15,000円程度が必要となります。
他人の使用が予定されている土地
こちらは費用がどれくらい掛かるかはケースバイケースになりますが、
- 通路
- 墓地
- 境内地
- 水路
- ため池
などに現在使用、または今後使用される予定の土地は申請できません。
土壌汚染されている土地
例えば、ガソリンスタンドや薬品を使用する工場などに利用していた土地で土壌汚染されている場合も申請を行えません。
まず、土壌汚染されているかの調査が必要ですが、一般的に100㎡あたり30万円程度です。
土壌汚染の調査や対策工事は、汚染されている土壌の深度にもよりますが、仮に土の入れ替える場合は1立方メートルであれば4~5万円と言われています。
境界が明らかではない土地
隣接する土地の所有者と境界について争いがある土地も引き取って貰えません。
国庫帰属の条件として測量までは求められていませんが、実際に争っているのであれば土地家屋調査士に依頼して境界線を測定して貰う必要はあると思います。
仮に50坪程度の宅地で確定測量を行う費用は40~50万円程度が相場になります。
相続土地国庫帰属制度に「申請するだけ」でも費用がいる!?
相続土地国庫帰属制度を利用するにあたり、まず「承認申請」があります。
その後書面・実地調査が行われ、承認されれば「負担金を納付」して国庫帰属となります。
そして、初めの承認申請で審査手数料として一筆14,000円が必要になります。
つまり、10筆あれば14,000円×10筆=140,000円となります。
ちなみに申請が却下・不承認の場合でも、この14,000円は返金されません。
さらに相続土地国庫帰属制度が承認されると「負担金」が必要!?
法務局の審査を経て無事に承認されると、今度は10年分の土地管理費相当額の負担金を納付しなければいけません。
負担金は土地の種類に応じて計算方法が変わります。
面積に関わらず「20万円」が負担金の基本となりますが、状況に応じて別途計算式があります。
宅地の負担金算定
面積に関わらず「20万円」が基本。
ただし、都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域は、面積に応じて次の計算で負担金が算定されます。
面積区分 | 負担金額 |
50㎡以下 | 国庫帰属地の面積×4,070円+208,000円 |
50㎡超100㎡以下 | 国庫帰属地の面積×2,720円+276,000円 |
100㎡超200㎡以下 | 国庫帰属地の面積×2,450円+303,000円 |
200㎡超400㎡以下 | 国庫帰属地の面積×2,250円+343,000円 |
400㎡超800㎡以下 | 国庫帰属地の面積×2,110円+399,000円 |
800㎡超 | 国庫帰属地の面積×2,010円+479,000円 |
田畑の負担金
面積に関わらず「20万円」が基本。
ただし、都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域は、また農用地区域の田・畑については、面積に応じて次の計算で負担金が算定されます。
面積区分 | 負担金額 |
250㎡以下 | 国庫帰属地の面積×1,210円+208,000円 |
250㎡超500㎡以下 | 国庫帰属地の面積×850円+298,000円 |
500㎡超1,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積×810円+318,000円 |
1,000㎡超2,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積×740円+388,000円 |
2,000㎡超4,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積×650円+568,000円 |
4,000㎡超 | 国庫帰属地の面積×640円+608,000円 |
森林の負担金
森林は面積に応じて算定します。
面積区分 | 負担金額 |
750㎡以下 | 国庫帰属地の面積×59円+210,000円 |
750㎡超~1,500㎡以下 | 国庫帰属地の面積×24円+237,000円 |
1,500㎡超~3,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積×17円+248,000円 |
3,000㎡超~6,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積×12円+263,000円 |
6,000㎡超~12,000㎡以下 | 国庫帰属地の面積×8円+287,000円 |
12,000㎡超 | 国庫帰属地の面積×6円+311,000円 |
その他の負担金
雑種地や原野などは、面積に関わらず20万円です。
ちなみに、基本の負担金20万円は2筆以上でも「隣接していれば負担金は20万円」です。
相続土地国庫帰属制度以外に不動産を手放す方法
相続土地国庫帰属制度を利用するのに、最低でも214,000円が必要になります。
また大きな山林をお持ちであれば、そもそも境界を明示するのに費用が掛かるので国庫に帰属させるために100万円以上のお金がかかると思います。
では、相続土地国庫帰属制度以外に何か良い不動産を手放す方法はないのでしょうか?
相続放棄をする
相続土地国庫帰属制度は、相続時で利用できるので相続放棄するのも一つの手です。
注意点としては、
- 相続を知った時から3ヶ月以内
- いらない不動産以外の全ての遺産を放棄することになる
- 相続財産清算人が決まるまで保存義務は残る
などがあります。
注意点として、保存義務は最後に相続放棄した人に残ります。
共有持ち分を放棄する
共有名義の場合は、所有権を放棄したら他の所有者に帰属します。
どのみち登記の際に他の共有者の協力は必要となりますが、所有権の放棄は誰に断るわけでもなく単独で出来ます。
農地バンクや森林経営管理制度を利用する
農地バンクは、所有者から農地を借り受け、利用したい人に貸付けを行っています。
森林経営管理制度は、市町村が森林所有者から経営管理を委託され、他の林業経営者に再委託をして活用する制度です。
個人間で贈与する
国庫帰属のように多額の負担金もなく、所有権を手放せるのは個人間で贈与することでしょう。
あなたが所有に困っている不動産も、広い日本のどこかで利用したい人はきっとみえると思います。
おわりに
この相続土地国庫帰属制度は「令和5年4月27日」から開始されました。
開始当初は問い合わせが殺到しているというニュースもありましたが、実際に制度を利用された人は少ないのではないでしょうか?
理由としては、
- 相談したものの「国庫帰属が出来ない土地」と言われた
- 負担金が思ったよりも高額になる
という話を耳にします。
その都度コラムに追加していきますので、またサイトに訪問頂けると幸いです。
最後までご覧頂きありがとうございました!